去る2021年9月10日、スバルが北米仕様の新型WRXを発表しました。
そのデザインやスペックを巡り、様々なことが言われています。
特にエンジンについてはあまりにも不憫な言われ方をしているので、今回記事を書いてみました。
新型WRXの概要
新型WRXは、新しいSGP(Subaru Global Platform)ベースの車体を採用し、エンジンはアセントなど搭載されているFA24ターボ型。
ADASにはレヴォーグのアイサイトXと同等のものが採用されているようです。
トランスミッションはCVT(Subaru Performance Transmissionと呼称)と6MTを採用。6MTはアイサイト非搭載です。
本当にパワーダウンしたの?
巷では、「FA24型になったのにパワーダウンした!」と言われています。本当でしょうか?
まず、”あえて”国内仕様のVAG型WRX S4と比較してみます。北米仕様は、単位を換算して表記しています。
新型WRX北米仕様 | VAG型WRX S4 | |
エンジン型式 | FA24 | FA20 |
エンジン形式 | 水平対向4気筒 ツインスクロールターボ |
水平対向4気筒 ツインスクロールターボ |
排気量 | 2,387cc | 1,998cc |
最高出力 | 202kW(274PS)/5,600rpm | 221kW(300PS)/5,600rpm |
最大トルク | 350N・m/2,000-5,200rpm | 400N・m/2,000-4,800rpm |
燃料 | レギュラー相当(87AKI) | ハイオク(RON98) |
確かに落ちています。国内仕様のWRX S4と比較すると。
ただし、ここでパワーダウンした!と言っていいのは、普通の人だけです。モータージャーナリストや車オタクは、もう1歩踏み込んでください。
あなた達のことですよ。
motor-fan.jp
どういうことかというと、先代の北米仕様同士で比較すると分かります。
新型WRX北米仕様 | 先代WRX北米仕様 | |
エンジン型式 | FA24 | FA20 |
エンジン形式 | 水平対向4気筒 ツインスクロールターボ |
水平対向4気筒 ツインスクロールターボ |
排気量 | 2,387cc | 1,998cc |
最高出力 | 202kW(274PS)/5,600rpm | 200kW(272PS)/5,600rpm |
最大トルク | 350N・m/2,000-5,200rpm | 350N・m/2,000-5,200rpm |
燃料 | レギュラー相当(87AKI) | レギュラー相当(87AKI) |
先代比べると、若干ですがパワーは上がっています。
排気量が20%上がっているのにそれだけ?と思うかもしれませんが、それはこのあと説明します。
Motor-Fanの記事では、先代WRX STI(EJ25)と新型WRXで比較をして「かなりのパワーダウン」と表現しています。
そもそも比較対象にWRX STIを挙げることをおかしいと思わないのか。失格。
AUTOCARの記事では、パワーダウンとは書いていないものの、比較対象がWRX S4(300ps)とWRX STI(308ps)です。不合格。
なぜ北米仕様はパワーが低いのか?
北米のWRXは先代から6MTがラインナップされていますが、この6MTはWRX STIで使用しているTY85型トランスミッションではなく、TY75型*1です。
TY75型ミッションは、許容トルクが350N・mと言われており、ハイオク仕様FA20フルパワーの400N・mを受け止められません。*2
これが足枷となり、北米仕様はCVT仕様とあわせてピークトルクが350N・mになり、それに伴いパワーも落ちています。
証拠として、北米仕様のアセント/レガシィXTと比較するとよくわかります。
新型WRX北米仕様 | アセント/レガシィXT | |
エンジン型式 | FA24 | FA24 |
エンジン形式 | 水平対向4気筒 ツインスクロールターボ |
水平対向4気筒 ツインスクロールターボ |
排気量 | 2,387cc | 2,387cc |
最高出力 | 202kW(274PS)/5,600rpm | 200kW(264PS)/5,600rpm |
最大トルク | 350N・m/2,000-5,200rpm | 376N・m/2,000-4,800rpm |
燃料 | レギュラー相当(87AKI) | レギュラー相当(87AKI) |
最高出力はWRXのほうが高いですが、最大トルクはアセントのほうが上です。
アセントはCVTのみでTY75型トランスミッションの制約がないため、87AKIガソリンで出せる範囲でトルクを引き上げています。
国内仕様はどうなる?
まだMTとアイサイトのマッチングもとれていないようなので、次期WRX S4に6MTはラインナップされないでしょう。
来年といわれている新型WRX STIの登場時に、アイサイト×MTを大々的に宣伝することになるでしょう。*3
次期WRX S4のエンジンスペックは、次の2つのどちらかでしょう。
- 先代同様300PS, 400N・mまでトルクを引き上げて先代同等に
- 北米仕様と同じ275PS, 350N・mに留め、レギュラーガソリン仕様とする(アセント同様376N・mまで上げる余地は有り)
若干パワー落ちてもレギュラーなら、って人も結構いると思います。
さいごに
ネットニュースで様々な情報が入手できるようになったと同時に、質の悪い記事も目立つようになりました。
自動車系の記事なのに、交通違反で「減点」と平気で書いてあったりしますからね。
正しい知識を持ち、しっかりと調べた上で記事を作ってもらいたいものです。